ピタゴラス数
ふと、 mizumiya-umi.hatenablog.comを読んで数時間考えてたら、予想が証明できてしまったので、載せます。
$a_1,a_2,b_1,b_2,c_1,c_2\in\mathbb{Z}\setminus{0}$
を
$$a_1^2+b_1^2=c_1^2, a_2^2+b_2^2=c_2^2$$
を満たすものとする.ただし, $2\mid b_1,b_2$
となるように取る.
$$D_1=a_1a_2+b_1b_2,D_2=a_1b_2-a_2b_1$$
とおく.
ピタゴラス数の性質より,
$$\begin{cases} a_1=a_1'^2-b_1'^2,\\ b_1=2a_1'b_1' \end{cases},\quad \begin{cases} a_2=a_2'^2-b_2'^2,\\ b_2=2a_2'b_2' \end{cases}$$
を満たす $a_1',a_2',b_1',b_2'\in\mathbb{Z}$
が取れるから,
$$D_1+D_2i=(a_1-b_1i)(a_2+b_2i)=(a_1'-b_1'i)^2(a_2'+b_2'i)^2$$
となり, $x,y\in\mathbb{Z}$
で
$$x^2-y^2=D_1, 2xy=D_2$$
を満たすものが存在する.
よって,
$$\begin{cases} -D_2^2+4x^4=4x^4-4x^2y^2=4D_1x^2,\\ D_2^2-y^4=4x^2y^2-y^4=4D_1y^2 \end{cases}$$
$$\therefore x^2=\frac{D_1\pm\sqrt{D_1^2+D_2^2}}{2}, y^2=\frac{-D_1\pm\sqrt{D_1^2+D_2^2}}{2}$$
ここで,
$$2x^2-D_1=x^2+y^2, 2y^2+D_1=x^2+y^2$$
であるから, 根号の前は正符号であり,
$$x^2=\frac{D_1+\sqrt{D_1^2+D_2^2}}{2}, y^2=\frac{-D_1+\sqrt{D_1^2+D_2^2}}{2}$$
となる.
一方, $c_1^2c_2^2=(a_1^2+b_1^2)(a_2^2+b_2^2)=D_1^2+D_2^2=(x^2-y^2)^2+(2xy)^2=(x^2+y^2)^2$
より, $c_1c_2=x^2+y^2$
であるから,
$$\frac{a_1a_2+b_1b_2-c_1c_2}{2}=\frac{D_1-(x^2+y^2)}{2}=\frac{(x^2-y^2)-(x^2+y^2)}{2}=-y^2$$
したがって,
\begin{align*} \left(\frac{a_1+a_2}{2}\right)^2+\left(\frac{b_1+b_2}{2}\right)^2+y^2 &=\frac{a_1^2+b_1^2+a_2^2+b_2^2+2a_1a_2+2b_1b_2}{4}+\frac{-a_1a_2-b_1b_2+c_1c_2}{2}\\ &=\frac{c_1^2+c_2^2+2c_1c_2}{4}\\ &=\left(\frac{c_1+c_2}{2}\right)^2 \end{align*}
【書評】数学の本
持っている本やおすすめの本について。大半は専門書というより読み物。ただし、ここにある本を完全に理解しているわけでもないので誤った説明もあるかもしれない。
フェルマーの最終定理を扱っている物語で最初に読んだのは高校生の頃。最後の方でフェルマーの最終定理がどう示されたかを命題の間の論理関係に落とし込んで説明していて、感心させられた。論理関係に落とし込むとはどういうことかもう少し説明すると、「フェルマーの最終定理が成り立たないとこういう曲線ができるけど、そういう曲線は存在しないことが知られている。だから、フェルマーの最終定理が成り立つ」というようなことが書かれている。
5次以上の方程式には解の公式が存在しない、ということは数学に興味ある人ならどこかで聞いたことがあるはず。これを示すためにはガロア理論というものが応用される。ガロア理論には群、体(たい)という高校では聞かない概念が使われていて、普通の高校生には敷居が高いように思える。その群というものを公理をただ持ち出して抽象的に説明するのではなくアミダクジという馴染みやすい例を用いて説明しているため、高校生にもおすすめできる。また、ガロア理論を数学書で学んだが、数学書によくある公理→定理→証明の連続のために分かったという気になれない人にも、具体的に見てみることで何かの助けになるかもしれない。
大学数学とはどんなものなのかを知りたい人に一読を勧めたい。
数学の研究を将来の一候補にしている人や数学の道を続けようか迷っている人に勧めたい。数学者が若いとき(学生時代など)に経験したエピソードや何を考えていたかなどを少し知ることができる。
ガロアの伝記が第一部で、ガロア理論に続く現代数学の流れの概説が第二部になっている。ガロアについて知りたい人やガロア理論を超えた先に何があるのが知りたい人に勧めたい。
\[p\textbf{が平方数の二つの和で表せる}\Leftrightarrow p\equiv1\bmod{4}\]
が成り立つことを発見した。この定理を含む理論に類体論というものがあり、その先に非可換類体論というものがある。これらのことはフェルマーの最終定理や佐藤テイト予想というものと深く関連している。その流れを概説する本であり、数論に興味ある人に勧めたい。
東大出版の数学の基礎(集合・数・位相)の記号論理のところより断然分かりやすかった。それはこちらは啓蒙書の部類だから当然といえば当然なのだが。分かりやすい理由としてはタイトルにもあるように普段使う日本語の論理から入って適宜記号論理の言葉の類似を使って説明したあとに、数学の記号論理へと入っていく橋渡し的な構成がされているから、と思う。数学科入ってεδ悩んでいる人に一読を薦めたい。
群、環、体などの(抽象)代数学の初歩を学び終えた頃に代数学って何なのだろうと思い、図書室で借りて、興味を惹いたところだけ読んだ本。代数学を学んでいくうちに、その起源を知りたくなったら読んでみては如何?
最近知って、色々と衝撃を受けた本。自分の理解って浅いんだなぁと改めて思い知らされてしまった。内容を1つだけ取り上げると、(-1)×(-1)=1について、環論学んだ人がやりがちな証明は証明じゃないと言っていて、一読の価値がある。代数の初歩は一通り学んで数論をやろうかなって人も読んでみるといい。証明はまともに読まずに流れだけをざっと読むだけでも得られるものはあると思う。
ネットで見つけた予想の部分的な証明
皆の投稿 - 原始根の和と円分多項式 - 数学博物館 すうじあむ
にあった予想(@mizumiya_umiさんによる)を$p$にかなりの制限を付けて証明した。
$p$を素数とし, $p-1$ は$2q\;(q:$奇素数$)$ の形とする.
$\bmod{p}$ の原始根全体を
$$A=\{a_1, \cdots, a_{\varphi(p-1)}\}$$
とおく.すなわち,
$$(\mathbb{Z}/p\mathbb{Z})^\times=\{\bar{a_1}, \cdots, \overline{a_{\varphi(p-1)}}\}$$
また, $0\le b<p$ を
$$\sum_{i=1}^{\varphi(p-1)}a_i\equiv b\bmod{p}$$
を満たすように取る.
$(\mathbb{Z}/p\mathbb{Z})^\times$ は巡回群だから, $\bmod{p}$ の原始根$a$ を1つ選べば,
$$A=\{a^i\mid i\in(\mathbb{Z}/(p-1)\mathbb{Z})^\times\}$$
とも表せる.
このとき, 合同式
$$\sum_{i\in(\mathbb{Z}/(p-1)\mathbb{Z})^\times}a^i\equiv b\bmod{p}$$
を,
$$a^{\frac{p-1}{2}}\equiv-1\bmod{p}$$
によって簡単にすると,
$$\Phi_{p-1}(a)\equiv0\bmod{p}$$
となる(ことを示す)$\cdots(\ast).$
以降の多項式はすべて$(\mathbb{Z}/p\mathbb{Z})[X]$
の元とする.
$$f(X)=\sum_{i\in(\mathbb{Z}/(p-1)\mathbb{Z})^\times}X^i-b,\; g(X)=\prod_{i=1}^{\varphi(p-1)}(X-a_i)\text{ とおく}.$$
すると, $(\ast)$は$f(X)$
を$(\mathbb{Z}/p\mathbb{Z})[X]$
のイデアル$(X^{\frac{p-1}{2}}+1)$
による剰余環上で考えると, $\Phi_{p-1}(X)$
の0でない定数倍になることと言い換えられる.
$b$の定義から, $a_i$は$f(X)$の根になるから,$g(X)$
は
$f(X)$ を割り切る.
よって,
$$f(X)=g(X)h(X)$$
となる$h(X)$
が存在する.
$a_i$は
$$X^{p-1}-1=\prod_{d\mid(p-1)}\Phi_d(X)$$
の根であるから, $p-1$
のある約数$d$
に対して, $\Phi_d(X)$
の根.
したがって, $X^d-1$
の根となるが, $a_i$は$\bmod{p}$
の原始根だから, $d=p-1.$
つまり, $a_i$ はすべて$\Phi_{p-1}(X)$
の根なので, $g(X)$
は$\Phi_{p-1}(X)$
を割り切る.
しかし, 次数が等しいので, ある$C(\in(\mathbb{Z}/p\mathbb{Z})^\times)$
が存在して,
$$g(X)=C\Phi_{p-1}(X).$$
さらに, $(\mathbb{Z}/p\mathbb{Z})[X]$
のイデアル$(X^{\frac{p-1}{2}}+1)$
を法として考えれば,
$$\overline{f(X)}=\overline{C}\;\overline{\Phi_{p-1}(X)}\;\overline{h(X)}$$
このとき,
$$\deg\overline{f(X)}\le\deg(X^{\frac{p-1}{2}}+1)-1=\frac{p-3}{2}=\deg\Phi_{p-1}(X)=\deg\overline{\Phi_{p-1}(X)}$$
であるから, $\overline{h(X)}$
は0でない定数となり, $\overline{f(X)},\overline{\Phi_{p-1}(X)}$
は互いに定数倍.
したがって, $(\ast)$は示され, このことより, $\Phi_{p-1}(X)$
の項の数は$b\neq0$
のとき, $\phi(p-1)+1.$
例
$p=11$のとき, $A={2,6,7,8}={2,2^3,2^7,2^9}$であり, $b=1.$
\begin{align*} X+X^3+X^7+X^9-1&\equiv X+X^3-X^2-X^4-1\bmod{(X^5+1)}\\ \Phi_{10}(X)&=X^4-X^3+X^2-X+1. \end{align*}
根の対称式
2年前にtwitterで次のように呟いた
z^5-11z-5=0の解α1~α5に対し、1/(2-α1)+1/(2-α2)+…+1/(2-α5)を求めるのいい計算練習になるよ。大学受験生の
— 冷 (@0_A_M_) 2016年4月20日
※数式の部分を一応見やすく再掲:
の解 に対し,
これについて昨日考えたが、
当時想定してた方法は忘れたけど、昨日の夜やった方法のが明解な自信ある https://t.co/3zLvkcFPVa
— 冷 (@0_A_M_) 2018年2月26日
その方法を以下で解説
【数学】実数係数方程式のペアになっている解
実数係数次方程式などに虚数解があるとその複素共役も解になるというのは高校数学の問題で1度は目にしたと思う.
まずこれが何故そうなるのかを見ていく.
例えば, 方程式 を考え, これが虚数解 を持ったとすると, 次を満たす.
この等式の両辺で複素共役を取ると
となるから, 複素共役 も方程式 の解になるというわけである.
ところで, 複素共役には次の性質があると習う.
これは環準同型というものの一種になっている.
環準同型とは何か?というと, 次を満たす関数(普通は写像とよぶ) のことである.
関数 は複素数 に対し, を満たすとする(これを複素共役写像とよぶ).
このとき, は環準同型であり,実数を代入したときの値は元の値と変わらない.
こういう関数で作ったペア は同じ実数係数方程式の解になっている.
このようなペアが出来るには複素共役の性質に赤で書かれたものがあるのがミソになっていて, そのような性質があれば複素共役以外でもペアの解が出てくる.
(ちなみに, 係数に実数ではないものがあるときは複素共役も解になるとは限らない.)
実は有理数の平方根を 倍する関数はその性質(環準同型であり, 有理数を代入しても変わらない)を持っている. ※ただし,その有理数は何かの2乗ではないとする.
例えば, を に写す関数 である.
ここで, 関数の定義域は何かというと と有理数の四則演算で得られる数( など)全体である.
すると, 有理数係数方程式に という解があれば, も解である.
例えば, 方程式 には という解があるので, も解であると分かる.