レイの数学メモ

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【数学】実数係数方程式のペアになっている解

実数係数3次方程式などに虚数解があるとその複素共役も解になるというのは高校数学の問題で1度は目にしたと思う.

まずこれが何故そうなるのかを見ていく.

例えば, 方程式 x^3+x-1=0 を考え, これが虚数\alpha を持ったとすると, 次を満たす.

\alpha^3+\alpha-1=0

この等式の両辺で複素共役を取ると

\bar{\alpha}^3+\bar{\alpha}-1=0

となるから, 複素共役 \bar{\alpha} も方程式 x^3+x-1=0 の解になるというわけである.

ところで, 複素共役には次の性質があると習う.

\cdot\overline{\alpha+\beta}=\bar{\alpha}+\bar{\beta}
\quad\cdot\overline{\alpha\beta}=\bar{\alpha}\bar{\beta}

これは環準同型というものの一種になっている.

環準同型とは何か?というと, 次を満たす関数(普通は写像とよぶ) \sigma のことである.

\sigma(1)=1,\quad\sigma(x+y)=\sigma(x)+\sigma(y),\quad\sigma(xy)=\sigma(x)\sigma(y)

関数 \tau複素数 \alpha に対し, \tau(\alpha)=\bar{\alpha} を満たすとする(これを複素共役写像とよぶ).

このとき, \tau環準同型であり,実数を代入したときの値は元の値と変わらない.

こういう関数で作ったペア \alpha,\tau(\alpha) は同じ実数係数方程式の解になっている.

このようなペアが出来るには複素共役の性質に赤で書かれたものがあるのがミソになっていて, そのような性質があれば複素共役以外でもペアの解が出てくる.

(ちなみに, 係数に実数ではないものがあるときは複素共役も解になるとは限らない.)

実は有理数平方根(-1) 倍する関数はその性質(環準同型であり, 有理数を代入しても変わらない)を持っている. ※ただし,その有理数は何かの2乗ではないとする.

例えば, \sqrt{5}-\sqrt{5} に写す関数 \rho である.

ここで, 関数の定義域は何かというと \sqrt{5}有理数の四則演算で得られる数(1+\sqrt{5}, \frac{2}{3-\sqrt{5}} など)全体である.

すると, 有理数係数方程式に 3+\sqrt{5} という解があれば, \rho(3+\sqrt{5})=3-\sqrt{5} も解である.

例えば, 方程式 x^4-6x^3+5x^2-6x+4=0 には 3+\sqrt{5} という解があるので, 3-\sqrt{5} も解であると分かる.