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【数学】微分不等式

《キーワード:微分不等式、微分方程式、グロンウォールの不等式》

微分方程式はよく聞くが、微分不等式というのは滅多に聞かない。

1年前くらいにとあるフォロワーに次の証明の質問をされたのだが、微分方程式などは門外漢のため初めて見る概念だった。

$$y'(x)\le a(x)y(x)+b(x)\quad(p\le x\le q)$$

$$\Rightarrow y(x)\le y(p)\exp\left(\int_{p}^{x}a(t)\;dt\right)+\int_{p}^{x}b(t)\exp\left(\int_{t}^{x}a(s)\;ds\right)dt\quad(p\le x\le q)$$

微分方程式から考えるといいのでは?とアドバイスだけして保留せざるを得なかったのだが、試行錯誤の果てに説明ほとんどなしで次のまとめにあるような連ツイをしている。

togetter.com

説明が雑すぎるので、ブログで改めて解説しようと思い、まとめを見ながら考えていたが、同次形に帰着させた後の議論に関しては時間が経ちすぎていて詳細がよく分からない。

というか、よくよく考えると1年前の連ツイでは結論を証明できてない。

そんなわけで違う方針でやることに。

で、思い付いたのが

$$D(x)=y'(x)-(a(x)y(x)+b(x))$$

と置いちゃえ、と。

そうすると、なんと

$$y'(x)=a(x)y(x)+(b(x)+D(x))$$

という微分方程式が誕生します。(???)

少し腑に落ちないような気もするが、微分不等式が微分方程式に帰着。

一階線形微分方程式なのでもう楽勝ですね。

教科書かネットから一般解の公式を引っぱってくる(例えば、 1階線形微分方程式 | 高校物理の備忘録 )か、自分で導くかすれば $y(x)$ の形が明らかに。

一応、書いておくと、 $Y'(x)=A(x)Y(x)+B(x)$ の一般解は

$$Y(x)=Y(p)\exp\left(\int_{p}^{x}A(t)\;dt\right)+\int_{p}^{x}B(t)\exp\left(\int_{t}^{x}A(s)\;ds\right)dt$$

微分を考えるときはこっちの形のがいいかも。

$$Y(x)=\left(Y(p)+\int_{p}^{x}B(t)\exp\left(-\int_{p}^{t}A(s)\;ds\right)dt\right)\exp\left(\int_{p}^{x}A(t)\;dt\right)$$

不定積分の形

$$Y(x)=\left(C+\int B(x)\exp\left(-\int A(x)\;dx\right)dx\right)\exp\left(\int A(x)\;dx\right)$$

か公式としてよく出ているだろうが、それを積分区間を明示するには積分区間の下端を定数、上端を元の積分変数にして、被積分関数の変数を別の変数に変えてその変数による積分に直してから、積分定数を調整すればいい。(最初から導いた方が早そう)

例えば、$\int A(x)\;dx$ を $\int_{p}^{x}A(t)\;dt$ に変える。

微分不等式だから特別なことをするのかと思いきや、案外、あっけなく終わりました。

詳細も画像1枚に収まる分量。

f:id:reiSR:20200113052005p:plain
微分不等式詳細

一応、PDFのリンクも貼っておく。

drive.google.com

さて、微分不等式という名前があるのか検索したところ、グロンウォールの不等式(Gronwall's inequality)というのがヒット。

グロンウォールという名前は微分方程式の講義で聞いた記憶がある。

ja.m.wikipedia.org

中身を見てみると、………!!!?

$$u'(t)\le\beta(t) u(t)$$

ならば、対応する微分方程式

$$y'(t)=\beta(t) y(t)$$

の解によって、 $u(t)$ は上から評価できる。

まさにこれでした。

某フォロワーさん、Wikipedia見ていればもう少しちゃんと対応できました。。ごめんなさい。m(。_。)m