【数学】有理数と$n$ 進法の小数
$r\in\mathbb{R}$ に対し、
『$r$が有理数であるためには$r$が有限小数もしくは循環小数であることが必要十分』
が成り立つ。一般に、 $n$ を正整数とするとき、
『$r$が有理数であるためには$r$は$n$進法で有限小数もしくは循環小数であることが必要十分』
これについて証明する。
十分性$(\Leftarrow)$ については $10$ 進法のときと同様に示せるので、略。
必要性$(\Rightarrow)$ が問題になるが、鍵となるのは位数の概念
$n,a\in\mathbb{Z}_{>0},\gcd(n,a)=1$ とするとき、 $$a+n\mathbb{Z}\in(\mathbb{Z}/n\mathbb{Z})^\times$$ の位数 $$m=\mathrm{ord}(a+n\mathbb{Z})$$ は次を満たす最小の正整数 $$a^{m}\equiv1\bmod{n}$$
まず$r$ は有理数なので、整数 $a$ と正整数 $b$ を用いて、 $$r=\frac{a}{b},\gcd(a,b)=1$$ と書ける。
① $\gcd(n,b)=1$
$b=1$ なら、 $r$ は整数なので、小数部分は $0$ となり、有限小数。
それ以外を考える。
$$m=\mathrm{ord}(n+b\mathbb{Z})$$
とおくと、
$$n^{m}\equiv1\bmod{b}$$
だから、
$$n^{m}a\equiv a\bmod{b}$$
つまり、ある整数 $k$ が存在して、
$$n^{m}a-a=bk$$
と書けるから、
$$n^{m}\frac{a}{b}-\frac{a}{b}=k$$
したがって、 $r$ の $n$ 進法表示の小数第 $i$ 位と小数第 $(i+m)$ 位は一致するから、 $r$ は循環小数で循環節の長さは $m $。
② $\gcd(n,b)\neq1$
$$t=\max\{e\in\mathbb{N}\mid n\text{の素因数}p\text{が存在して}b\text{は}p\text{で最高で}e\text{回割りきれる}\}$$
とおくと、
$$\gcd(n,\frac{b}{\gcd(n^t,b)})=1$$
であり、
$$n^tr=\frac{n^ta}{b}=\frac{\frac{n^t}{\gcd(n^t,b)}a}{\frac{b}{\gcd(n^t,b)}}$$
となり、$n^tr$ は①から、$n$ 進法で有限小数または循環小数。
$r$ の $n$ 進法表示は $n^tr$ の表示から、$t$ 個分小数点を左にずらせばいいから、有限小数または循環小数。
例として、$r=\frac{7}{15}$ を考える。
$n=8$ のとき
$$8^2\equiv4\bmod{15},8^4\equiv1\bmod{15}$$
であるから、
$$\mathrm{ord}(8+15\mathbb{Z})=4$$
$$8^4\frac{7}{15}-\frac{7}{15}=\frac{4095\cdot7}{15}=273\cdot7=(3567)_8$$
よって、 $$r=(0.\dot{3}56\dot{7})_8$$
$n=12$ のとき
$3^1\mid15$
であるから、
$$12^1\cdot\frac{7}{15}=\frac{28}{5}$$
また、
$$12^2\equiv4\bmod{5},12^4\equiv1\bmod{5}$$
であるから、
$$\mathrm{ord}(12+5\mathbb{Z})=4$$
$$12^4\frac{28}{5}-\frac{28}{5}=\frac{20735\cdot28}{5}=4147\cdot28=(57244)_{12}$$
よって、 $$r=(5.\dot{7}24\dot{4})_{12}$$
※ $n$ 進法での小数表示を求めるだけなら、
\begin{align*} \frac{7}{15}\cdot8&=3+\frac{11}{15}\\ \frac{11}{15}\cdot8&=5+\frac{13}{15}\\ \frac{13}{15}\cdot8&=6+\frac{14}{15}\\ \frac{14}{15}\cdot8&=7+\frac{7}{15} \end{align*}
より、$r=(0.\dot{3}56\dot{7})_8$ とした方が楽