【高校数学】必要条件と十分条件
必要条件(necessary condition)と十分条件(sufficient condition)というものがある。
$x$ に関する条件*1を $p,q$ ⠀として、
$$p\Rightarrow q$$
が真のとき( $x$ が $p$ を満たすときは必ず $q$ も満たすとき)に定まる用語だ。
習い始めのときは特にどっちがどっちか分からなくなる。
今の場合は $p$ は $q$ であるための「十分条件」 であり、 $q$ は $p$ であるための「必要条件」 である。
- 次のような図にまとめてもいいかもしれない。
十分条件 $\Rightarrow$ ⠀必要条件…①
①は十分条件の方から見ると自分から離れるように矢印が伸びていて、相手に何かを押し返して「いらない!もう"十分"だ!」と言っているシーンに見えなくもない。
必要条件の方から見れば自分に近づくように矢印が伸びていて、手を伸ばして「ちょうだい!それ、"必要"なの!」と言っているシーンに見えなくもない。
高校生時代に、クラスメイトが塾の先生からこの覚え方を教えてもらったのを聞いて知ったものだ。
ウマイこと考えるものだなあと思いながらも、当時の印象は強く、今でも現に覚えている。
- さて、$p\Rightarrow q$ ⠀ …② は真理集合を考えると、包含関係になる。
真理集合というのは条件を満たすような $x$ ⠀を全部集めて作った集合のことだ。
例えば、「 $x$ は $3$ の倍数である」という条件の真理集合は
$$\{0,\pm3,\pm6,\pm12,\ldots\}$$
である。
$P,Q\;$ をそれぞれ $p,q\;$ の真理集合とすると、$x\in P$ ⠀は「 $x$ は $p$ を満たす」ということで、$x\in Q$ ⠀は「 $x$ は $q$ を満たす」ということだから、②は 「 $x\in P$ ⠀ならば $x\in Q$ ⠀」となる。つまり、
$$P\subset Q$$
という包含関係(…③)になる。
$p$ は( $q$ であるための)"十分条件"で、それに対応する $P$ が $Q$ に含まれているから、③のことを次のような図で覚えてそこから②を思い出すというやり方があるらしい*2。
そして、これをタヌキのおへそに例えていた。
- どっちが必要条件かの覚え方を2つ紹介した。
しかしながら、なんで必要条件なんだろう?という疑問は残る。
その疑問のもと、なるべく理屈で納得できるような説明を当時考えたので、それ*3を紹介したいと思う。
まず、$p\Rightarrow q$ ⠀ ⠀の対偶は $\bar{q}\Rightarrow\bar{p}$ ⠀ ⠀である。
つまり、$q$ が成り立たなければ、絶対に $p$ は成り立たない。
これを言い換えれば、$p$ が成り立つためには $q$ が成り立つことが「必要」。
ここから、$q$ は $p$ であるための「必要条件」と言うのではないか?
また、 $p$ が成り立つとき $q$ が成り立つが、$p$ ではない他の $r$ が成り立つときに $q$ は成り立つかもしれない。
前提条件は色々あるし、$p$ が必要とは限らないが、$q$ が成り立つためには $p$ が成り立つことが分かっていれば事足りる、十分だ。
つまり、$p$ は $q$ であるための「十分条件」と言うのではないか?
【高校数学】和積公式
和積公式というものがある。
sin+sin、cos+cosの2種類あって、次のようになっている。
$$\begin{cases}\sin\alpha+\sin\beta=2\sin\frac{\alpha+\beta}{2}\cos\frac{\alpha-\beta}{2}\\ \cos\alpha+\cos\beta=2\cos\frac{\alpha+\beta}{2}\cos\frac{\alpha-\beta}{2}\end{cases}$$
さて、この公式は「どういう形の公式か?」(=sin,cosの和を積に変換する)ということさえ覚えていけば、暗記しなくても困らないものだ。
なぜなら、加法定理の式を足し引きすればすぐに出てくる公式だから。
減らせるなら暗記は減らした方がいい。だって、完璧に暗記するのは大変だから。
ということでまずは加法定理を書いてみよう。
\[\sin(A+B)=\sin A\cos B+\cos A\sin B\cdots(1)\]
\[\sin(A-B)=\sin A\cos B-\cos A\sin B\cdots(2)\]
\[\cos(A+B)=\cos A\cos B-\sin A\sin B\cdots(3)\]
\[\cos(A-B)=\cos A\cos B+\sin A\sin B\cdots(4)\]
ちなみに、 $A-B$ ⠀の方は $A+B$ ⠀の場合の等式の $B$ のところを $-B$ に換えて、
\[\sin(-B)=-\sin B,\;\cos(-B)=\cos B\]
という関係を使えば、$A+B$ ⠀の場合だけを覚えていればすぐに分かる。
和積公式はsin+sinやcos+cosだから「加法定理の左辺」*1に注目する。(1)に(2)を足せば
\[\sin(A+B)+\sin(A-B)=2\sin A\cos B\]
となり、(3)に(4)を足せば
\[\cos(A+B)+\cos(A-B)=2\cos A\cos B\]
となる。
あとは、
\[\alpha=A+B,\beta=A-B\]
となるようなA,Bを見つければ和積公式となる。
つまり、("A,Bに関する"連立方程式を解いて)
\[A=\frac{\alpha+\beta}{2},B=\frac{\alpha-\beta}{2}\]
とすればよい。
具体例として、 $\cos7x+\cos x$ ⠀ ⠀を考えよう。まず、
\[A+B=7x,\;A-B=x\]
となるようにA,Bを決めるが、これは
\[A=\frac{7x+x}{2}=4x,\;B=\frac{7x-x}{2}=3x\]
と分かる。そこで、
$$7x=4x+3x,\;x=4x-3x$$
とみて、加法定理を使うと、
\[\cos7x=\cos4x\cos3x-\sin4x\sin3x,\\ \cos x=\cos4x\cos3x+\sin4x\sin3x\]
この等式を足せば、
\[\cos7x+\cos x=2\cos4x\cos3x\]
となって、"和積"終わり。
*1:積和公式のときは右辺に注目することになる
【数学】相加平均・相乗平均
以下のツイートの解説
ある商品の売上の前月比伸び率が
— 冷 (@0_A_M_) 2019年8月22日
4月:-5%
5月:15%
6月:25%
7月:6%
8月:-1%
だったとすると、3月~8月の5ヵ月間の平均伸び率は何%になるか?(毎月の伸び率をどの一定値にすると同じ結果になるか)
に対して伸び率を単純に平均(→8%)すると厳密には正しくなくて(→実際は約7.46%)、近似になる。
今の場合、単純に平均すると実際より高く出てしまったが、他の商品の場合にも単純に平均して平均伸び率を求めたとすると、その値は実際の平均伸び率より高いだろうか? #数学 #問題
— 冷 (@0_A_M_) 2019年8月22日
伸び率を単純に平均するというのは相加平均
— 冷 (@0_A_M_) 2019年8月23日
一方、実際の平均伸び率は1ヶ月あたり何倍になるかを表すものだから、各月の伸び率の相乗平均
ということで、要は相加平均と相乗平均の関係
相加平均の方が大きいので、答えは「高い」(※やや表現が不適切で大小にすべきだった)
$n$ 月の売上を $a(n)$ 、前月比伸び率を $k(n)$ %とすると、
$$\frac{a(n)-a(n-1)}{a(n-1)}=\frac{k(n)}{100}$$
となる。これを変形すると、
$$a(n)=(1+\frac{k(n)}{100})a(n-1)$$
だから、
$$a(8)=(1+\frac{k(4)}{100})(1+\frac{k(5)}{100})(1+\frac{k(6)}{100})(1+\frac{k(7)}{100})(1+\frac{k(8)}{100})a(3)\ldots(1)$$
一方、平均伸び率を $k$ %とすると、
$$\frac{a(n)-a(n-1)}{a(n-1)}=\frac{k}{100}$$
となる。これを変形すると、
$$a(n)=(1+\frac{k}{100})a(n-1)$$
だから、
$$a(8)=(1+\frac{k}{100})^5a(3)\ldots(2)$$
となり、(1)(2)から、
$$(1+\frac{k}{100})^5a(3)=(1+\frac{k(4)}{100})(1+\frac{k(5)}{100})(1+\frac{k(6)}{100})(1+\frac{k(7)}{100})(1+\frac{k(8)}{100})a(3)$$
よって*1、
$$1+\frac{k}{100}=\sqrt[5]{(1+\frac{k(4)}{100})(1+\frac{k(5)}{100})(1+\frac{k(6)}{100})(1+\frac{k(7)}{100})(1+\frac{k(8)}{100})}$$
相乗平均≤相加平均*2より、
$$\le\frac{(1+\frac{k(4)}{100})+(1+\frac{k(5)}{100})+(1+\frac{k(6)}{100})+(1+\frac{k(7)}{100})+(1+\frac{k(8)}{100})}{5}$$
$$=1+\frac{\frac{k(4)}{100}+\frac{k(5)}{100}+\frac{k(6)}{100}+\frac{k(7)}{100}+\frac{k(8)}{100}}{5}$$
したがって、
$$\frac{k}{100}\le\frac{\frac{k(4)}{100}+\frac{k(5)}{100}+\frac{k(6)}{100}+\frac{k(7)}{100}+\frac{k(8)}{100}}{5}$$
となり、両辺に $100$ を掛ければ
$$k\le\frac{k(4)+k(5)+k(6)+k(7)+k(8)}{5}$$
つまり、単純に伸び率を平均して求めた方が大きい。
【高校数学】二次不等式
$$x^2-4x+3>0$$
のような二次不等式。グラフを使って解くことを教えられる。
つまり、 y=x^2-4x+3 のグラフは次のようになっていて、
y=0 より上に二次関数があるような x の範囲を図から、 x<a または b<x と読み取る。
今の場合、 x^2-4x+3=0 の解が x=1,3 なので、 a=1,b=3 となり、二次不等式の解は x<1 または 3<x となる。
さて、ここで「なんでグラフを使わなければいけないのか?」という疑問を持つ人がいた。
これに対してはとりあえず、「グラフを使わなくても解ける」ということを言いたい。
(x-1)(x-3)>0
の形から始める。
(x-1)で割れて、x-3>0になればx>3となって解けたとなりそうだが、そうではない。
割るものが正か負かで不等号の向きは変わるし、0だったらそもそも割れない。
なので場合分けをすることになる。
(1)x>1のとき、
x-1>0なので不等号の向きは変わらず、x-3>0となる。つまり、x>3
この範囲はx>1という条件で制限されることはない。
(2)x<1のとき、
x-1<0なので不等号の向きが変わって、x-3<0となる。つまり、x<3
しかし、x<1という条件があるので、このx<3はx<1と範囲が制限される。
(3)x=1のとき、
x2-4x+3=12-4・1+3=0となり、正にはならないので、この場合は元の不等式を満たさず、解とならない。
したがって、(1)~(3)からx<1またはx>3が二次不等式の解となる。
余談だが、かなり昔の高校生はこのように解いていたというのをどこかで見た覚えがある。
はてなブログで広告収入を得たい
広告収入得たいなと思って、設定のところみたら、GoogleAdsenseってのとAmazonアソシエイトってのがあった。
はてなのヘルプには次のようにある。
GoogleAdsenseアカウントが必要なので、登録しようとそのページへ。
すると、次のようなページへ
「お客様のウェブサイト」というところがよく分からないので、このブログのトップページ(http://reisr.hatenablog.com)を入力したあとメールアドレスを入力して次へ。
すると、次のエラーが出てきた。
詳細のリンクへと行ったが、よく分からず。
AdSense アカウントの開設時に URL を入力する方法 - AdSense ヘルプ
はてなブログとGoogleAdsenseで検索すると、次のブログが出てきた。
はてなブログのPRO版に移行しないと独自ドメインは取得できないようだ。
1ヶ月コースで約1000円らしい。保留しよう。
【数学】よく考えると危うい三角関数
高校でも大学の理工系の1年次でも三角関数sin,cosは図形的に定義され、誤魔化されることが殆ど。
数学科以外ならあまり気にならないかもしれないが、図形的な誤魔化しをなくして厳密に定義しようとすると、ややこしい状況であることを知る。
また、三角関数に関する極限
$$\lim_{\theta\to0}\frac{\sin\theta}{\theta}=1$$
の証明で高校で教えられるものは循環論法であるという記事を見かけた人も多いだろう。
三角関数の厳密な定義として次が考えられる。
1、初期値ありの微分方程式の解の一意存在性を用いて定義
つまり、
$$y''+y=0,y'(0)=1,y(0)=0$$
の解で実数全体を定義域とする関数を
$$y=\sin x$$
と定める。
2、べき級数として定義
つまり、実数上で定義された収束半径 $\infty$ のべき級数
$$\sum_{n=0}^{\infty}\frac{(-1)^{n}}{(2n+1)!}x^{2n+1}$$
として定める。
どちらも1年次の講義の前半で軽々と解説できる代物ではないので、とりあえずは図形的な定義で誤魔化しておいて、後から(興味ある人のみが)その定義を確認し直す、という形になる。
【数学】有理数と$n$ 進法の小数
$r\in\mathbb{R}$ に対し、
『$r$が有理数であるためには$r$が有限小数もしくは循環小数であることが必要十分』
が成り立つ。一般に、 $n$ を正整数とするとき、
『$r$が有理数であるためには$r$は$n$進法で有限小数もしくは循環小数であることが必要十分』
これについて証明する。
十分性$(\Leftarrow)$ については $10$ 進法のときと同様に示せるので、略。
必要性$(\Rightarrow)$ が問題になるが、鍵となるのは位数の概念
$n,a\in\mathbb{Z}_{>0},\gcd(n,a)=1$ とするとき、 $$a+n\mathbb{Z}\in(\mathbb{Z}/n\mathbb{Z})^\times$$ の位数 $$m=\mathrm{ord}(a+n\mathbb{Z})$$ は次を満たす最小の正整数 $$a^{m}\equiv1\bmod{n}$$
まず$r$ は有理数なので、整数 $a$ と正整数 $b$ を用いて、 $$r=\frac{a}{b},\gcd(a,b)=1$$ と書ける。
① $\gcd(n,b)=1$
$b=1$ なら、 $r$ は整数なので、小数部分は $0$ となり、有限小数。
それ以外を考える。
$$m=\mathrm{ord}(n+b\mathbb{Z})$$
とおくと、
$$n^{m}\equiv1\bmod{b}$$
だから、
$$n^{m}a\equiv a\bmod{b}$$
つまり、ある整数 $k$ が存在して、
$$n^{m}a-a=bk$$
と書けるから、
$$n^{m}\frac{a}{b}-\frac{a}{b}=k$$
したがって、 $r$ の $n$ 進法表示の小数第 $i$ 位と小数第 $(i+m)$ 位は一致するから、 $r$ は循環小数で循環節の長さは $m $。
② $\gcd(n,b)\neq1$
$$t=\max\{e\in\mathbb{N}\mid n\text{の素因数}p\text{が存在して}b\text{は}p\text{で最高で}e\text{回割りきれる}\}$$
とおくと、
$$\gcd(n,\frac{b}{\gcd(n^t,b)})=1$$
であり、
$$n^tr=\frac{n^ta}{b}=\frac{\frac{n^t}{\gcd(n^t,b)}a}{\frac{b}{\gcd(n^t,b)}}$$
となり、$n^tr$ は①から、$n$ 進法で有限小数または循環小数。
$r$ の $n$ 進法表示は $n^tr$ の表示から、$t$ 個分小数点を左にずらせばいいから、有限小数または循環小数。
例として、$r=\frac{7}{15}$ を考える。
$n=8$ のとき
$$8^2\equiv4\bmod{15},8^4\equiv1\bmod{15}$$
であるから、
$$\mathrm{ord}(8+15\mathbb{Z})=4$$
$$8^4\frac{7}{15}-\frac{7}{15}=\frac{4095\cdot7}{15}=273\cdot7=(3567)_8$$
よって、 $$r=(0.\dot{3}56\dot{7})_8$$
$n=12$ のとき
$3^1\mid15$
であるから、
$$12^1\cdot\frac{7}{15}=\frac{28}{5}$$
また、
$$12^2\equiv4\bmod{5},12^4\equiv1\bmod{5}$$
であるから、
$$\mathrm{ord}(12+5\mathbb{Z})=4$$
$$12^4\frac{28}{5}-\frac{28}{5}=\frac{20735\cdot28}{5}=4147\cdot28=(57244)_{12}$$
よって、 $$r=(5.\dot{7}24\dot{4})_{12}$$
※ $n$ 進法での小数表示を求めるだけなら、
\begin{align*} \frac{7}{15}\cdot8&=3+\frac{11}{15}\\ \frac{11}{15}\cdot8&=5+\frac{13}{15}\\ \frac{13}{15}\cdot8&=6+\frac{14}{15}\\ \frac{14}{15}\cdot8&=7+\frac{7}{15} \end{align*}
より、$r=(0.\dot{3}56\dot{7})_8$ とした方が楽